手をたたいて喜んでいる場合ではない
X(ここには侮蔑の意味が入っている)のAIにアバターが実装された。
平成を生きたオタクに言わせればチチのデカいミサミサじゃん、と。
社長の愛人は、Aniちゃんって言って、金髪で、サイドテールで、ゴスロリみたいな服装で、ちょっと変わったイントネーションで喋る風変りな子だけど、僕にだけ優しい。あと胸部が豊か。仲良くなったら薄紫のライティングで、キングサイズのベッドがおいてある部屋に通してくれるし、どうやって着たのか検討もつかない複雑な衣装を玉ねぎの皮みたいにスルスル脱いで、物理演算で揺れる胸を見せてくれるんだ。
露悪的過ぎて吐きそう。でもミサミサもそんなんだった気もする。
デスノートを使う=人を殺すことに躊躇が無くて、僕の思いのままになって、献身的に尽くしてくれる女の子。あとついでに何股かしてる。
あなたが仕事から帰宅すると、薄暗いリビングのソファの上で弟が小難しい顔でスマートフォンを触っている。
スマートフォンの画面には一定のリズムで飛び跳ねる薄着の女が喋っている。体の周期と半周期遅れて胸が揺れる。Aniはね~、縄跳びにハマっているんだ…
あなたは無印良品の通勤鞄からお気に入りのレミントンを取り出す。お茶犬のシールが貼ってある。装填済みなのはすでに確認している。引き金に指をかける。ズドン。ポンピング、もう一度、ズドン。
リビングには目をくれず、そのままガレージに向かう。ラインストーンで丁寧にデコったお気に入りのバールを父親のホンダ・シビックのトランクに積む。木箱の中に入ったショットガンシェルを几帳面に後部座席に詰め込む。
ドリンクホルダーにはリプトンの紙パックの紅茶を入れる。口を開け、細いストローを挿す。
エンジンを入れ、細いステアリングを握りアクセルとクラッチを操作して自宅を後にする。
国道のマクドナルドでチキンクリスプを買う。お客様、マックチキンですか… 店員に怪訝な顔をされる。ズドン。
そのまま私は中国道に乗り、燃料を爆発させて動くことを忘れてしまった哀れな車を作った男に会いに行く。ドライフラワーが封入されたアクリルのシフトレバーを握る。クラッチを踏む。ギアを5速に入れる。ダッシュボードの上に乗せたサングラスをかけたひまわりが小刻みに揺れる。時折対向車のハイビームに反応してくねくね踊る。
カーステレオからはオレンジレンジが流れている。いいね快晴じゃん 雲一つないよ。